ミルクランをわかりやすく解説！メリットやデメリット、導入時のポイント

こんにちは！西日本を中心に総合物流サービスを展開するキチナングループの末次です。

物流の現場では「ミルクラン」という言葉を耳にする機会があるのではないでしょうか。

発注側が複数のサプライヤーを順番に回り、荷物をまとめて引き取るこの配送方式は、物流コストの削減や環境負荷の低減につながることから、多くの企業が注目しています。

このコラムでは、ミルクランの基本的な仕組みや名称の由来、メリット・デメリット、導入時のチェックポイントまでをわかりやすく解説します。

物流における「ミルクラン」とは？

ミルクランとは、発注側が手配した車両が複数の納入元（サプライヤー）を巡回し、集荷した荷物を一括して持ち帰る配送方式です。

「巡回集荷」と呼ばれることもあり、共同配送の一形態として位置付けられています。

サプライヤーがそれぞれ個別に配送するのではなく、発注側が用意した1台の車両が決められたルートを巡回し、必要な商品・部品を順に回収して戻る仕組みです。

名称の由来は、牛乳メーカーが生乳を効率的に集めるため、酪農家を巡回して集乳していたことにあります。

酪農家がそれぞれ工場へ届けるのではなく、1台の集乳車が複数の酪農家をまわって回収していました。

この「run（走る・巡回する）」という意味が組み合わさり、「ミルクラン」と呼ばれるようになったといわれています。

現在では、自動車・電機・食品など、多品種の部品や原材料を複数のサプライヤーから調達する業界で広く活用されています。

ミルクランのメリット・デメリットをわかりやすく！

ミルクランを導入することで、どのような効果が期待できるのでしょうか。

メリットとデメリットの両面を見ていきましょう。

ミルクランのメリット

ミルクランには、発注側・サプライヤー側の双方に多くの利点があります。

ミルクランは特に、サプライヤー1社あたりの納品量が少ない場合に効果を発揮します。

自動車部品や電子部品など、多品種少量の調達が必要な製造業では、小口配送が増えがちですが、ミルクランによって配送を効率的に集約できるのです。

メリット①車両台数を減らして輸送費を抑えられる

特に大きな利点は、配送に必要な車両がまとめられる点です。

従来のようにサプライヤーごとに個別配送が発生すると、複数台のトラックが必要でしたが、ミルクランでは1台の巡回で完結します。

その結果、燃料費・車両維持費・ドライバーの稼働などが抑えられ、積載率の向上にもつながります。

発注側は輸送費を一元管理しやすくなり、サプライヤー側は専用便を確保する負担が軽減されます。

メリット②検品作業を一本化し、庫内作業が効率化する

複数サプライヤーから荷物がバラバラに届くと、着荷のたびに検品しなければなりません。

ミルクランではまとめて到着するため、検品のタイミングを一本化しやすく、作業時間や人件費の削減につながります。

受け入れ時間も一定になりやすいため、庫内作業の計画も立てやすくなります。

メリット③輸送費の「見える化」で原価把握がしやすい

輸送費を自社で管理することで、仕入れ原価と輸送費を切り分けて把握できるようになります。

サプライヤーによる「運賃込みの請求」では見えにくかったコストの内訳が明確になり、より精度の高い原価計算や経営判断が可能になります。

メリット④環境負荷の低減につながる

車両台数や走行距離が減ることで、CO2排出量の削減に直結します。

環境配慮が企業の評価にもつながる昨今、CSRの観点からもプラスに働きます。

このような効率化や環境配慮は、複数の荷主が協力して配送を一本化する共同配送とも通じるものがあります。

共同配送については、「共同配送とは？メリット・デメリット、注意点などを解説」で詳しく解説しています。

ミルクランのデメリット

一方で、ミルクランは全てのケースで最適とは限りません。

導入前に知っておきたい注意点を確認しておきましょう。

デメリット①サプライヤーの場所次第ではコストが増える

複数のサプライヤーが近くにまとまっていれば効率的ですが、1社でも遠方があると巡回距離が伸びてしまいます。

その結果、個別配送よりコストが増えてしまうケースもあり、事前のルート検証が欠かせません。

デメリット②大型車両が入れない拠点への対応が必要

敷地が狭いなど、大型車両が入れないサプライヤーがある場合は、小型車両を別途手配する必要があります。

そのぶんコスト増につながる可能性があるため、事前に受け入れ環境の把握が必要です。

デメリット③1カ所の遅れが全体に影響する

1台の車両で巡回するため、どこか1カ所で遅延が発生すると全体のスケジュールが崩れます。

渋滞・積み込み遅れなど予測できない事象に備え、柔軟な運行計画が求められます。

デメリット④積載量の調整に手間がかかる

サプライヤーごとに荷物を積み増していくため、途中で過積載にならないよう各社の引き取り量を事前に調整する必要があります。

需要変動や梱包サイズのばらつきがあると計画通りに積めず、追加便の発生や空きスペース発生のリスクもあります。

ミルクランを導入する際のポイント

ミルクランを円滑に導入し、安定して運用するには、事前準備と関係者との連携が大切です。

ミルクランを導入する際の3つのポイント

ここでは導入前に知っておきたいの主なポイントを紹介します。

①導入前に効果を見極める

まずは、集荷先の位置関係・移動距離・荷量などを細かく分析し、導入効果をシミュレーションしましょう。

状況によっては、一部のサプライヤーだけをミルクラン化し、他は従来方式を維持するなど、柔軟な使い分けにできます。

立地条件や受け入れ態勢の確認も重要で、無理のない計画を立てることが成功の鍵となります。

②サプライヤーと協力体制を構築する

各サプライヤーとの集荷ルールの設定が重要です。

集荷時間・荷量の目安・トラブル発生時の対応フローなど、導入前にしっかり話し合い、共通認識を持っておきましょう。

サプライヤー側の出荷体制（荷姿の統一、作業手順、集荷時間までの準備状況など）についても確認し、必要に応じて適宜改善します。

特に、遅延が発生した場合の連絡体制や代替ルートの確保など、想定外の問題への対応策を準備しておくことで、運用が安定します。

③配送管理システムで運行を見える化する

リアルタイムで車両位置を把握できる配送管理システムを導入すれば、遅延時の対応が容易になります。

サプライヤーも到着予定を確認しやすくなり、集荷準備がスムーズに進みます。

最適ルートの自動提案機能などがあれば、渋滞や突発的な状況にも柔軟に対応でき、関係者全員が運行状況を共有しやすくなるでしょう。

なお、物流コストの削減はミルクランだけでなく、さまざまな視点からアプローチできます。

「物流コストとは？内訳やコストを抑える方法をチェック」では、物流コストの全体像と削減方法について詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

ミルクランで物流の効率化を目指そう！

ミルクランは、発注側が車両を手配して複数の納入元を巡回し、荷物をまとめて集荷する効率的な配送方式です。

牛乳メーカーによる生乳集荷が名前の由来で、現在では製造業を中心に広く利用されています。

配送コストや検品作業の削減、環境負荷の低減など多くのメリットがありますが、集荷先の立地やスケジューリングの難しさなど、注意すべきポイントもあります。

導入前のシミュレーションや、サプライヤーとのルールづくり、配送管理システムの活用が成功の鍵です。

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