こんにちは！西日本を中心に総合物流サービスを展開するキチナングループの津田です。
企業の物流管理において、効率的な在庫管理は常に重要な課題。
特に近年注目されているのが「VMI（ベンダー管理在庫）」という仕組みです。
VMIを導入することで、在庫の無駄を減らし、欠品リスクを低減できるだけでなく、サプライチェーン全体の効率化にもつながります。
今回は、VMIの基本概念から導入メリット、注意点まで詳しく解説します。
物流担当者の皆様が抱える「VMIって何？」「うちの会社に合うの？」といった疑問にお答えしていきますので、ぜひ最後までご覧ください。
物流における「VMI（ベンダー管理在庫）」とは？
VMIとは、Vendor Managed Inventoryの略で「ベンダー管理在庫」と訳されます。
読み方は「ブイエムアイ」です。
この仕組みでは、ベンダー（材料供給業者や納品業者、サプライヤー）が、顧客であるバイヤー（納品先の小売業者やメーカーなど）に代わって在庫管理を行います。
従来の在庫管理では、バイヤー側が在庫レベルを管理し、モノが必要になったタイミングでベンダーに発注するのが一般的でした。
しかしVMIでは、ベンダー側がバイヤーと事前に適切な在庫レベルや在庫ポリシーを取り決め、ベンダーが主導して在庫を補給する仕組み。
従来バイヤー側が行なっていた販売予測、適切な在庫量の決定、発注、納入予定の管理などもベンダー側が行います。
在庫の所有権も、バイヤーに使用されるまでは基本的にベンダー側に帰属します。
VMIの始まりと発展
VMIが本格的に始まったのは、1980年代のアメリカ・ウォルマートとP&Gの事例からといわれています。
当時、ウォルマートは販売状況改善のために、メーカーであるP&GにPOSデータ（Point of Salesデータ：販売実績データ）や在庫データを共有しました。
このPOSデータと在庫データの共有がVMIの特徴であり、当時としては画期的な方法でした。
ウォルマートがP&Gに在庫データと売上・在庫・価格などの情報を提供し、P&Gは共有された情報をもとに販売予測と在庫管理を行いました。
P&Gは共有された情報により販売予測精度を上げることができ、適切な生産計画を作成できるように。
これによって効率的な在庫補充が実現し、コスト削減と販売機会損失の防止につながったのです。
日本でも古くからVMIに似た仕組みがあり、富山の配置薬（置き薬）などが代表例でしょう。
この仕組みでは、薬の販売員が各家庭に薬箱を置き、定期的に訪問して使用された薬を確認し補充します。
使用された分だけが請求される仕組みで、こうした方式もVMIの一種と考えられます。
現在では、このVMIの考え方は小売業だけでなく、製造業など多くの業界で広く採用されています。
VMIの導入を検討したい！メリットとは？
VMIを導入する際には、ベンダー側とバイヤー側、それぞれの立場によってメリットが異なります。
それぞれの立場から見たメリットについて詳しく見ていきましょう
バイヤー側のメリット
バイヤー側にとってのVMI導入の主なメリットは以下の通りです。
欠品による生産・販売機会の損失防止
ベンダーが在庫管理を担当し、必要なタイミングで納品するため、欠品による生産遅れや販売機会の損失リスクが低減されます。
特に重要な部品や人気商品の不足が防げるため、ビジネスの安定化につながります。
欠品リスクの低減
常に必要な分のみの納品となるため、無駄な在庫を抱えずに済み、在庫回転率が向上します。
在庫の最適化と回転率向上
必要分だけが適切なタイミングで納品されるため、過剰在庫を抱える必要がなくなります。
結果として在庫削減が実現し、在庫回転率も向上します。
無駄な在庫を抱えないため、倉庫スペースの有効活用にもつながるでしょう。
調達業務の効率化
複数の原料や部材を調達しているメーカーでは調達業務は煩雑になりがちですが、VMIではベンダー側が在庫管理を行うため、調達業務を大幅に削減できます。
発注作業や棚卸業務の負担が軽減され、その分のリソースをほかの業務に振り向けられます。
ベンダー側のメリット
ベンダー側にとっても、VMI導入には大きなメリットがあります。
需要予測の精度向上
バイヤーの在庫・販売状況のデータを直接得られるため、より正確な需要予測が可能になります。
この精度向上により、生産計画の最適化が実現し、生産効率の向上が見込めます。
販売機会の最大化
POSデータや在庫データなどの情報に基づいて販売予測を立て、在庫生産をコントロールできるため、在庫切れによる販売機会の損失を防止できます。
これにより安定した販売と長期的な信頼関係の構築につながります。
VMIを導入する際の注意点も確認
VMIには多くのメリットがある一方で、導入や運用に際して注意すべきポイントもあります。
ベンダー・バイヤー双方の立場から注意点を見ていきましょう。
バイヤー側の注意点
バイヤー側には以下のような注意点があります。
IT投資の必要性
VMIの成功は情報共有と信頼関係によって決まります。
リアルタイムに適切な情報を提供するためには、VMI導入時にITシステムを整備する必要があり、初期投資としてコストが発生します。
導入時には投資対効果を十分に検討する必要があるでしょう。
取引条件の明確化
VMIの運用においては、情報の提供方法、部品・資材などの所有権、余った在庫の補償方法などを事前に取り決め、契約書に明記することが重要です。
のちのトラブルを回避するためにも、詳細な取引条件を定めておきましょう。
パートナーシップの構築
従来の「発注側と受注側」という関係から、「対等なパートナー」という関係に意識を切り替える必要があります。
情報共有と信頼関係に基づいて協働しなければ、VMIでは成功できません。
ベンダー側の注意点
一方で、ベンダー側も以下のような点に注意が必要です。
情報精度と信頼関係の重要性
バイヤー側からの情報が不十分であったり、タイムリーでない場合、効率的な在庫管理ができず、不要な在庫を抱えるリスクがあります。
共有される情報の精度やタイミングが重要であり、確実な情報連携の仕組みが必要です。
専門的なノウハウの必要性
バイヤーから提供された情報に基づいて精度の高い需要予測を立てるノウハウや、IT基盤の構築が必要になります。
これらの知見がないままVMIを実施すると、業務が煩雑になり、期待した効果を得られないことがあります。
VMI倉庫の適切な運用
VMI倉庫とは、VMIを行うために必要な部品・原材料や商品の在庫を保管するための倉庫で、通常はベンダー側が用意します。
例えば、製品メーカー工場に向けて、各ベンダーから個別に小口納品されていた原料をいったんVMI倉庫に集約することで、原料在庫と納期の可視化が実現します。
製品メーカーの生産計画に従い、専用車両に異なるベンダーの原料を積み合わせて納入することも可能になります。
VMIの導入を検討する際には、まずは既存の在庫管理の課題を明確にすることが重要です。
在庫管理の改善方法について、こちらのコラムでも詳しく解説していますので、ぜひご参考ください。
物流VMIの導入で在庫最適化と業務効率化を目指す
物流におけるVMI（Vendor Managed Inventory）とは、ベンダーが主導となって在庫管理を行う仕組みです。
ベンダーがバイヤーの在庫状況をリアルタイムで把握し、適切なタイミングで商品を補充する革新的な在庫管理手法です。
物流にVMIを導入することで、バイヤー側は欠品リスクの低減や在庫削減、業務負担の軽減といったメリットを享受できます。
一方、ベンダー側も適切な需要予測や生産計画の立案が可能になり、販売機会の損失防止につながります。
しかし、導入には課題もあります。
バイヤー側では、ITシステムへの初期投資、取引条件の明確化、パートナーシップ構築が必要です。
ベンダー側では、共有情報の精度確保、需要予測のノウハウ習得、VMI倉庫の適切な運用といった課題があります。
成功のためには、双方のメリット・デメリットを十分に理解し、信頼関係に基づいた協働体制を構築することが重要です。
キチナングループでは倉庫保管サービスを提供しています。
お客さまのニーズに合わせてさまざまな荷物の保管が可能で、倉庫内での保管はもちろん、入庫から配送、輸送まで対応。
効率的な物流設計によるワンストップサービスを提供していますので、ぜひ一度ご相談ください。
この記事を書いた人
津田 康平
キチナングループ株式会社 倉庫事業部 主任
2018年中途入社。キチナングループ株式会社 倉庫事業部営業部。前職でも営業をしていました。プライベートでは奥様と買い物に行ったり、趣味のゴルフやバス釣りを楽しんでいます。好きな言葉は「この道より 我を活かす道無し この道を歩く」。
