こんにちは!西日本を中心に総合物流サービスを展開するキチナングループの末次です。
現在、物流業界は「2024年問題」によるトラックドライバー不足や物流コスト上昇といった課題に直面しています。
温度管理や安全性確保など特殊な対応が求められる医薬品物流においても、それらを含めたさまざまな課題を抱えています。
今回は、医薬品物流の基本から抱える課題、そして効率化への具体的な対策までを解説します。
医薬品を扱う企業の物流担当者の方々は、ぜひ参考にしてください。
医薬品物流とは?
医薬品物流とは、医薬品の製造元から医療機関・薬局までの輸送および保管を担う物流システムのことです。
一般的な物流と比較して、厳格な温度管理や品質管理が求められる、繊細で特殊な分野です。
医薬品物流で扱われるのは以下の3種類です。
- 医療用医薬品
- 医療機器
- 治験薬
医薬品物流の特徴
医薬品物流では、人体に直接影響を与える製品を扱うため、以下のような点で、通常の物流より厳格な品質管理が求められます。
- 温度・湿度の管理
- トレーサビリティ(物流過程の追跡)の確保
- 法規制に基づいた品質管理と運用
- セキュリティ対策
医薬品は適切な温度・湿度管理がなされなければ品質が低下し、患者の健康に影響を与える恐れがあります。
また、厚生労働省の医薬品の流通におけるガイドラインでは、医薬品の安全性と品質、流通過程での管理、偽造や盗難への対策が重要とされています。
医薬品を倉庫で保管・梱包・加工する際には、法規制に基づいた運用や品質管理が必須であり、場合によっては、医薬品製造業許可などの資格取得が必要となるケースもあります。
医薬品物流の輸送ルート
医薬品物流には主に以下の2つの輸送ルートがあります。
①メーカーから卸への物流
医薬品メーカーが製造した医薬品を卸業者の保管倉庫へ運びます。
運ばれた医薬品は、医療機関からの発注があるまで適切な温度管理のもとで保管されます。
②卸から医療機関への物流
医薬品卸業者が発注に基づいて医療機関への輸送・ピッキング・梱包などを行い、配送します。
このルートでは急配依頼や頻回配送への対応など柔軟性が求められます。
医薬品は、低温に管理しながら保管や輸送を行うケースが多いです。
コールドチェーン(低温物流)は医薬品物流において特に重要な要素です。
コールドチェーンについて詳しく知りたい方は、「コールドチェーン(低温物流)とは?仕組みや必要性、メリットも」をご覧ください。
医薬品物流が抱える課題
医薬品物流が抱える課題について、物流業界全体の課題、そして医薬品物流ならではの課題についても見ていきましょう。
人材不足による輸送力の低下
2024年からトラックドライバーの時間外労働時間上限規制が適用されています。
この規制によりドライバー1人当たりの稼働時間が制限され、既に深刻な人材不足に悩む物流業界では運転手確保がさらに困難に。
この運転手不足は医薬品物流にも大きな影響を与えています。
配送時間が長くなったり一日あたりの配送回数が減ってしまったりすることに加え、丁寧な作業や温度管理が難しくなると品質低下のリスクを高めてしまいます。
「高品質の医薬品が必要なときに届く」という医薬品物流の基本機能を脅かし、医療現場にも影響をおよぼす可能性があります。
物流コストの上昇
運送会社が法令遵守のための必要コストや運転者確保のための賃金負担増を運賃に反映することで、物流コストが増加します。
また、燃料費高騰や円安による輸入品の価格上昇、物価や人件費の上昇も医薬品流通コストに影響を与えています。
医薬品業界固有の課題
医薬品は薬価という公定価格が設定されており、製薬会社や卸売業者が物流コスト上昇分を単純に販売価格に転嫁することが難しいという特有の課題があります。
また、医療機関や薬局も保険制度により収入が制限されているため、コスト上昇分の受け入れには限界があります。
そのため、物流の効率化や共同配送の実施、配送頻度の適正化などを通じてサプライチェーン全体でコスト削減に取り組む必要があります。
医薬品物流の課題を解決するためにできること

医薬品物流の課題を解決するためには、サプライチェーン全体での協力が不可欠です。
課題解決に向けた3つの取り組みについて、各関係者ができる具体的な対策とともに紹介します。
余裕ある発注・配送計画の設定
物流リードタイム延長への対応として、製薬メーカーは生産・出荷計画を見直し、卸売業者は余裕を持った発注が不可欠。
医療機関も在庫状況を見据えた計画的な発注が求められます。
例えば、卸売業者は従来の発注タイミングより早めに製造販売業者へ発注し、医療機関等も同様に早期発注を心がけることで、納品遅延リスクを軽減できます。
緊急性の高い医薬品とそうでない医薬品で納期の差別化を図ることも有効です。
納品条件の見直しと柔軟化
法令順守と品質を確保しながらも、過度に厳しい納品条件を見直すことで物流効率化が可能です。
具体的には以下のような対応が考えられます。
- 時間指定配送の柔軟化(「午前中のみ」などの限定をなくす)
- 軽微な外装汚れ・破損の許容(製品自体に影響がない場合)
- 使用期限が短くても一定期間内に使用可能であれば受け入れる
こうした柔軟性の確保により、配送業者の負担軽減と効率向上が期待できます。
物流コストの適正分担
物流コスト上昇が避けられない中、関係者間での適切な分担が重要になります。
厚生労働省の「物流2024年問題の医薬品業界への影響と考えられる対応について」でも示されているように、以下の対応が推奨されています。
- 製造販売業者:コストの上昇要因を明確に説明し、適切な価格設定を検討する
- 卸売販売業者:物流コストの実態を医療機関等に対して適切に情報提供する
- 医療機関等:物流コスト増加に伴う価格交渉に適切に対応する
さらに業界全体では、共同配送の実施や積載効率の向上、配送ルートの見直しなど、物流の効率化に向けた取り組みも進められています。
物流会社だけではなく、医薬品物流に関わる全ての関係者が、それぞれの立場でできる対策を実行することが大切です。
医薬品物流の課題解決には効率化と関係者全体の協力が不可欠
医薬品物流は、2024年問題による輸送力の低下や物流コスト上昇の課題を抱えています。
また、コスト上昇を価格転嫁しづらいという医薬品物流特有の課題もあり、この課題の解決には業界全体で連携して取り組むことが不可欠です。
製造販売業者、卸売販売業者、医療機関等が協力し、余裕のあるスケジュール設定、納品条件の柔軟化、物流コストの適正分担など、それぞれの立場でできる対策を講じていく必要があります。
キチナングループでは、物流アウトソーシングサービスを提供し、お客様の商品特性や要望に合わせた最適な物流ソリューションを提案しております。
医薬品を含む特殊な管理が必要な商品にも対応した物流サービスを提供していますので、ぜひご相談ください。
この記事を書いた人

末次 正人
キチナンロジスティクス株式会社 営業部 部長
1996年新卒入社。キチナンロジスティクス株式会社 営業部。入社してからは茨城県や大阪府など様々な場所で配車や営業を経験。プライベートでは家族との時間を大切にしています。趣味はゴルフと食べ歩き。好きな言葉は「感謝」。